魚粉に依存しない新発想の養殖用飼料原料の開発
- 公開日: 2023-11-10
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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【研究の背景および目的】
魚介類の養殖に餌は重要な要素で、養殖魚の成長や品質に大きく影響します。養殖用配合飼料の主たる原材料として使われるのは、アジやイワシなど天然に生息する魚類で作る魚粉です。近年は餌用魚類の漁獲量が増加せず、世界的に増加する養殖生産を満たす量の魚粉の確保が難しくなっています。価格も高騰し、ほとんどを輸入に頼る日本の養殖漁業経営を圧迫しています。本研究は配合飼料の原料を天然資源に依存せず、人為的に生産出来る原材料に変える新技術の開発を目的としています。
【おもな研究内容】
シオミズツボワムシ複合種Brachionus (以下、ワムシ;右写真)は、主に海産魚類種苗生産(親魚養成、仔魚飼育を含む)で仔魚用初期餌料として使われている動物プランクトンです。この大量培養方法は既に確立していますが、配合飼料材料としては高コスト。ワムシを魚介類用配合飼料の原材料として利用するための、新たな技術開発の可能性について検討しています。
1.配合飼料原料としての使用
ワムシを大量培養して配合飼料を作成しました(右図)。ワムシを加工することなく、最低限の添加物(魚油、ビタミン類、粘着剤)で飼料作成が可能なことが明らかになりました。複数の魚類を使った飼育実験を実施中です。
2.配合飼料以外での使用
ウナギ仔魚用餌料
冷凍したワムシペーストを一定時間解凍したものを、ニホンウナギおよびチンアナゴ仔魚に給餌し、消化管内に入っていることが確認できました。ウナギの完全養殖に応用可能です。
餌となる微細藻類による質向上
ワムシ配合飼料は加工不要のため余分な添加物が不要ですが、有用物質の添加による質向上も可能です。餌となる微細藻類の種類や培養法を検討することで、高品質化とコストの低減が図れます。微細藻類の開発が実用化への最短距離と考え、実験を実施中です。
天然資源(魚粉)に依存した配合飼料作成から脱却するために、開発を進めます。
【期待される効果・応用分野】
1)天然資源に依存することなく、人為的に生産されたものだけを使っての養殖が可能となります。
→資源状況や環境変動に影響されることなく、安定的な養殖生産が期待できます。
2)魚類養殖だけでなく、畜産での動物性タンパク質の供給としての応用にも期待できます。
→人為的に動物性タンパク質を生産する様々な取組みの、基盤となり得るポテンシャルがあります。
飼料生産を海から切り離すことで魚類養殖技術を再構築、宇宙でも可能な循環型養殖も目指せます。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●餌となる微細藻類の種類によって、独自の特許取得の可能性があります。共同研究も可能です。
●ワムシ生体内へ取り込み可能な添加物の利用は、従来の餌材料の概念を覆す可能性があります。
●特許出願中:[特願]2023-180077
【コーディネーターから一言】
天然資源(魚粉)の低減は養殖魚飼料の大命題です。低コスト・高品質な配合飼料を人為的に生産する技術の開発は、完全な陸上養殖を可能にします。一緒に取組む飼料・微細藻類・栽培漁業等に関わる企業・機関を求めています。
研究分野:水産、養殖、餌料生物
キーワード:ワムシ、微細藻類、配合飼料
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