免疫抑制型好酸球の機能解明と食物アレルギーへの応用
- 公開日: 2023-04-26
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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【研究の背景および目的】
好酸球は白血球の一種で、寄生虫感染やアレルギー反応で重要な役割を果たす免疫細胞です。様々な臓器に多くの好酸球が存在していますが、その役割は十分に解明されていません。私たちはマウスの小腸に従来の好酸球とは異なり、免疫系を抑制する好酸球がいることを発見しました。この好酸球は免疫抑制型受容体Clec4a4を発現し、腸管内の寄生虫に対する免疫応答を抑制することが分かりました。この発見を食物アレルギーの新たな治療法に応用できると期待して、研究を進めています。
【おもな研究内容】
①Clec4a4+好酸球の
免疫抑制メカニズムの解明
マウスの小腸には、Clec4a4の有無で免疫抑制型好酸球と免疫促進型好酸球が存在すると分かりました。Clec4a4+好酸球が発現する遺伝子を網羅的に調べることにより、免疫抑制メカニズムに関与し得る遺伝子を同定しています。これら遺伝子の欠損マウスや中和抗体を用いて、免疫抑制メカニズムの解明を試みています。
②食物アレルギーにおける
Clec4a4+好酸球の役割の解明
Clec4a4+好酸球は寄生虫への免疫応答を抑制しますが、食物アレルギーにおける役割はまだ分かっていません。私たちは疾患モデルマウスを用いて、食物アレルギーにおけるClec4a4+好酸球の役割を調べています。そのために食物アレルギー疾患モデルマウスの実験系を立ち上げる準備を進めています。
③植物由来AHRリガンドを用いた
食物アレルギー・アナフィラキシー予防法の開発
本研究からClec4a4+好酸球の分化には芳香族炭化水素受容体(AHR)が必要であることが分かりました。アブラナ科植物(キャベツ、ブロッコリー等)にはAHRを活性化するリガンドが多く含まれています。安全な植物由来AHRリガンドを用いた、食物アレルギー・アナフィラキシー予防法の開発を検討しています。
【期待される効果・応用分野】
先進国では、国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持つとされます。とくに、食物アレルギーの治療は食事療法が中心であり、根治療法は確立されていません。免疫抑制型Clec4a4+好酸球は食物アレルギーを抑える可能性が高く、メカニズムの解明によって新しい治療法の開発につながることが期待されます。またClec4a4+好酸球の増殖に必要なAHR活性化物質は、アブラナ科の野菜に豊富に含まれます。植物由来の健康食品や医薬品としての実用化も検討できると考えています。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●本研究は米国科学アカデミー紀要Proceedings
of the National Academy of Sciencesに掲載(2022.6. 2)。また第51回日本免疫学会学術集会
ベストプレゼンテーション賞を受賞しました。
●大学院生を随時募集中。農学、工学、理学部出身者が多い研究室です。興味のある方はご連絡ください。
【コーディネーターから一言】
マウスの小腸内に免疫応答を抑制する好酸球を発見。この抑制型好酸球の機能を解明することで、食物アレルギー治療法の開発が期待できます。アレルギー・免疫の研究者や食品・医薬品企業との共同研究を求めています。
研究分野:免疫学、消化器学、血液学、神経免疫学、分子生物学
キーワード:ITAMシグナル、好酸球、マクロファージ、アレルギー、抗酸菌感染、痒み、AHR
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