X線精密観測による超巨大ブラックホール駆動機構の解明
- 公開日: 2023-05-24
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
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【研究の背景および目的】
銀河の中心には、太陽質量約100万-10億倍の超巨大質量ブラックホール(Super Massive Black Hole:SMBH)が、普遍的に存在することが近年の観測結果で明らかになりました。また、銀河の質量とSMBHの質量は非常に強く関係することもわかってきました。しかし銀河はSMBHの約10桁も広大です。サイズが大きく異なるSMBHと銀河がどのように影響を及ぼし合うのかは、未だに解明されていません。本研究はSMBHアウトフローの駆動機構を調べることで、宇宙の謎に迫ります。
【おもな研究内容】
この謎を解明する鍵が、SMBHアウトフローです。近年の観測結果により約50%のSMBHが、質量降着のみならず、SMBHアウトフローと呼ばれる、質量放出を行っていることが示唆されています。図1はSMBHアウトフローの模式図を示しています。このSMBHアウトフローは、銀河のガスを加熱するので、銀河の星生成活動を止めてしまう可能性があります。しかしながら、どのようにSMBHアウトフローが駆動されているのか?という問題は、未だに理解されていません。
SMBHアウトフローの駆動機構を調べるには、X線精密分光観測が最適です。何故なら、観測された吸収線のエネルギーと本来の吸収線のエネルギーのずれから、SMBHアウトフローの速度が推定出来るためです。私達は、2023年度打ち上げ予定の最先端のX線天文衛星XRISM (X-Ray Imaging and Spectroscopy
Mission: 図2)に参加しています。XRISMの高精度検出器
によるX線精密分光観測によって、SMBHアウトフローの
駆動機構に迫ろうとしています。
【期待される効果・応用分野】
X線天文観測は日本が世界をリードする分野で、宇宙空間のX線を観測することで宇宙の新たな姿が徐々に解明されてきました。宇宙には2兆個もの銀河があると言われ、各々の中心に超巨大質量ブラックホール(SMBH)が存在します。SMBHアウトフローがどのように駆動されているか、どんな影響を銀河に与えているか、等について、シミュレーションとXRISMの観測データの比較等によって理解を深めることが可能と考えています。次世代の科学教育の発展への貢献も期待されます。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●XRISMのX線精密分光観測によって新たに多くの宇宙の謎が解明されると期待されています。
●本学の物理・宇宙プログラム及び天の川銀河研究センターは日本有数の研究機関。世界中の研究機関と連携し、宇宙の研究に取り組んでいます。
【コーディネーターから一言】
超巨大質量ブラックホールと銀河の機構を研究。最新のX線天文衛星XRISMプロジェクトにも参加し、宇宙の新たな姿の解明に挑んでいます。宇宙と宇宙科学最前線の研究について、学校や市民講座等で講演が可能です。
研究分野:宇宙物理学、X線天文学
キーワード:超巨大質量ブラックホール
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