永久歯の自然萌出を可能とする骨再生誘導材の開発
- 公開日: 2021-10-12
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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【研究の背景および目的】
口唇裂・口蓋裂を代表とする口腔疾患では、顎堤(歯の生える部分)の骨欠損(顎裂)が生じることが多く、骨欠損部再建の手術が必要になります。この手術では自家骨移植を行うのが一般的ですが、腸骨からの移植骨採取は患者さんには大きな負担です。我々は口唇口蓋裂専門医療機関として、自家骨と同様の機能を果たす材料の開発に取り組んでいます。9~11歳で手術を受ける患者さんに向けて骨形成能だけでなく、永久歯の自然萌出を可能とする骨再生誘導材の製品化を目指しています。
【おもな研究内容】
1)オクタリン酸カルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Col)を用いた、顎裂治療への治験と解析
●オクタリン酸カルシウムは生体アパタイトの前駆体として知られています。我々は顎裂を有する口唇口蓋裂患者さんに対して、新開発のOCP/Col(ボナークⓇ)を自家骨の替わりに埋入し、埋入後の骨形成の状態を、自家骨を移植したケースと比較して、骨形成の有効性や永久歯の萌出に対する影響を評価しました。
臨床試験の結果、OCP/Col埋入症例は自家骨移植症例と同等の骨形成と永久歯の自然萌出が観察されました。今後は製品化と保険認可に向けて、科学的根拠の蓄積と発表を行っていく予定です。
2)炭酸アパタイト骨補填材における、永久歯自然萌出に関する評価と解析
●炭酸アパタイトはヒトの骨基質の成分の一つです。歯科領域では、すでにサイトランスⓇとして製品化されており歯科インプラント治療などで使用されています。我々はこの材料を口唇口蓋裂など永久歯未萌出の骨欠損患者さんへ応用することを検討しています。炭酸アパタイト埋入部位に形成された新生骨に、永久歯がどのように萌出してくるかを動物実験で評価した結果、サイトランス埋入部位に永久歯の自然萌出が観察されました。今後は特別臨床研究を予定しています。
【期待される効果・応用分野】
これまで、自家骨と同等の骨形成能と永久歯の自然萌出の両方を可能とする骨代替材料はありません。我々が研究している骨再生誘導材を臨床に用いることが可能になれば、患者さんからの骨採取が不要になり身体的・精神的負担が軽減します。口唇口蓋裂の骨移植術の入院期間が短縮され、術後の機能障害も少なくなるため、医療費削減にも寄与します。我々はアジア、アフリカでの医療活動・技術移転も行っており、海外での需要も実感しています。国内外への展開が期待される技術です。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●ボナークⓇは東北大学、東洋紡(株)と治験を実施し、実際の臨床で使用を目指しています。
●サイトランスⓇは(株)ジーシーと共同研究をしています。すでに製品化されているサイトランスⓇが永久歯萌出に与える影響を研究しています。
【コーディネーターから一言】
口唇口蓋裂の専門医療機関として出生時からの一貫治療を40年来、実践。手術・治療法の開発にも取り組んでいます。本研究は歯科材料の口唇口蓋裂への新たな応用技術。より良い治療の開発に資する連携を求めています。
研究分野:口腔顎顔面外科
キーワード:口唇口蓋裂 骨欠損 骨再生 骨補填材 オクタリン酸カルシウム 炭酸アパタイト
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