中枢神経系に着目した排便制御メカニズムの検討
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
近年、過敏性腸症候群(IBS)という排便障害が問題となっています。これは炎症や潰瘍など器質的疾患がないのに、便秘や下痢などの症状が続く病気で、脳や脊髄など中枢神経系が関わる障害です。ストレスが大きな原因と考えられますが、詳しい病態メカニズムは解明されていません。私たちは独自のinvivo実験系を用いて、中枢神経系がどのように排便を調節しているかを明らかにする研究を行っています。中枢神経系による排便障害の理解や治療法の開発に役立つことが目標です。
(主な内容)
○脊髄排便中枢に作用して、大腸運動を変化させる物質の検索 これまでの消化管運動の研究は、主に動物から取り出した摘出標本を用いて行われきました。しかし、この摘出標本では中枢神経系と切り離されてしまうため、脳や脊髄がどのように消化管運動を調節しているのかを調べることは困難でした。そこで私たちは、新たにin vivoの実験系を立ち上げ、中枢神経系による制御がどのように行われているのかを調べています。これまでに、脊髄排便中枢においてノルアドレナリンやドパミンが大腸運動を促進することが明らかになっています。(Sci.Rep.2015;5;12623,J.Physiol2016;594;4339-4350他)○中枢神経系に作用する排便障害の治療薬の評価 私たちが立ち上げたin vivo実験系を用いて、排便障害に対する新たな治療薬の効果の評価を行っています。 これまでに、ペプチドホルモンであるグレリンの合成アゴニストを静脈内投与することで、脊髄排便中枢に作用して大腸運動を促進することを報告しています。(Neurogastroenterol. Motil.2015;27;1764-1771)in vivo:マウスなど実験動物を用いた生体内実験。脳下行性疼痛抑制経路 (ノルアドレナリン・ドパミン)・過剰な活性化→下痢・機能不全→便秘脊髄排便中枢痛み大腸大腸運動↑
(期待される効果・応用分野)
中枢神経系による排便の調節メカニズムが明らかになれば、様々な排便障害の病態の解明や治療法の開発につながることが期待されます。またin vivo実験系により、新たに開発された治療薬の効果を調べることで、医薬品開発など医療応用への貢献も可能です。今後、高齢社会の進展に連れて、高齢者の排便管理は大きな医療課題になると考えられます。私たちは、この分野へ寄与することも視野に入れて研究を進めています。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●中枢神経系との連絡を保った独自のinvivo実験系を立ち上げました。これまで困難だった中枢神経系による排便制御メカニズムの解明が可能です。●獣医師として、猫巨大結腸症に興味があります。
(コーディネータから一言)
IBSなどの中枢神経系が関わる排便障害のメカニズムの解明を目指す研究。独自の実験系を用いた治療法の開発や治療薬の評価が可能です。医薬品メーカーや臨床医、獣医師等からの問合せをお待ちしています。
(研究分野)
生理学 消化管運動 神経生理
(キーワード)
排便障害 脊髄排便中枢 過敏性腸症候群(IBS)
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