COXー2阻害薬を用いたリンパ管奇形治療法の開発
- 公開日: 2021-05-30
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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研究の背景および目的
リンパ管奇形(lymphatic malformation: LM)は小児の頸部に発症することが多く、美容的な問題や発声・嚥下障害、時に気道閉塞を起こし致死的となる重大な病気です。私たちは培養細胞を使った実験、および臨床経験からCOX-2阻害薬がLMの治療薬として有望と考えています。将来、COX-2阻害薬をLM治療薬として臨床応用することを見据えて、LMにおけるCOX-2の作用と、COX-2阻害薬がLMの増殖を抑制することを示し、その分子生物学的機序を解明する研究をしています。
主な研究内容
リンパ管奇形(lymphatic malformation: LM)は、リンパ管性嚢胞を中心とした腫瘤病変で、多くの場合は先天性で、頸部に発症します。国内には約1万人のLM患者がいるとされ、特に小児が種々の症状に苦しんでいます。基本的な治療は外科的切除やピシバニールによる硬化療法ですが、約7割の患者ではこれらの治療後もLMは残存します。
私たちは、COX-2阻害薬がLMに効果のあることを見出しました。
手術ができず、ピシバニールによる硬化療法も無効であった小児患者
がLMの増殖とともに気道閉塞を来たしました(図上左)。疼痛に対し
てCOX-2阻害薬であるセレコキシブを内服したところ、内服開始か
ら2週間でLMが軟化し始め、継続したところ4週間目から縮小し、気
道閉塞が改善しました(図上右)。
セレコキシブはCOX-2に選択性の高い非ステロイド系の抗炎症剤
で、鎮痛薬として用いられています。鎮痛作用とは別に、COX-2阻
害薬は種々のがんの細胞株において抗リンパ管作用を介した抗腫瘍効
果を示すことがわかっています。そこで、私たちはヒトの初代培養リ
ンパ管内皮細胞をCOX-2阻害薬の存在下で培養したところ、リンパ
管内皮細胞によるゲル上での管腔形成(tube formation)がCOX-2阻
害薬の濃度依存性に抑制され、細胞増殖も抑制されました(図下)。
期待される効果・応用分野
本研究ではCOX-2がリンパ管増殖で果たしている役割と、COX-2阻害薬がリンパ管の増殖を抑制する機序を明らかにします。私たちはCOX-2阻害薬を、リンパ管奇形(LM)治療薬として臨床で使用できるようにしたいと考えています。COX-2阻害薬の中からLMに最適な医薬品を見出すことや新薬開発の可能性もあります。LM自体は比較的珍しい病気ですが、多くのがんがリンパ管を通じて転移することから、リンパ管の増殖を抑えることができれば、がん治療への応用も期待できます。
共同研究・特許などアピールポイント
●COX-2阻害薬を用いた動物実験、将来的には臨
床試験を行いたいと考えています。技術提供や資金
提供、共同研究が行える連携先を求めています。
●『Pediatrics』に症例報告を行い、海外からも多
くの反響が寄せられました。
コーディネーターから一言
鎮痛剤COX-2阻害薬のリンパ管奇形への効果
を発見、臨床適用を目指す研究です。機序を
解明すれば最適な薬剤の探索も可能。医薬品
メーカーとの連携を求めています。臨床医や
研究者のご協力、ご連絡もお待ちしています。
研究分野 小児科学、再生医学、腫瘍学
キーワード リンパ管腫、COX-2、がん
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