ゲノム編集で遺伝子異常由来の病気の治療に貢献する
- 公開日: 2020-07-07
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
近年「がん(腫瘍)は遺伝子の異常が原因である」ことが認知され、患者さんの遺伝子の異常を調べて、一人ひとりに合った治療を行う「がんゲノム医療」が注目されています。鹿児島大学病院でも「がん遺伝子診断外来」を設置、受診者数も増えています。当講座では「がんゲノム医療」の精度を高めるため、「ゲノム編集」技術を用いた研究を行っています。ゲノム編集は病気の解明だけでなく、多くの分野に応用される技術です。がんに限らず、様々な遺伝子異常に関わる研究を目指しています。
(おもな研究内容)
従来のがん薬物治療は、臓器ごとに使用する薬が決まっていますが、同じ臓器にがんが発症しても、薬の効果が高い患者とそうでない患者がいます。これは同種類のがんでも、人によって遺伝子異常が異なることが原因だとわかってきました。
「がんゲノム医療」とは、患者から採取したがん組織の遺伝子を調べ、がんの原因となる遺伝子異常を検査、その患者に最も効果があると考えられる治療薬を選択する治療法です。遺伝子検査によって一人ひとりに最適な薬を使用してがんを治療できる、治療効果が高い個別化医療として注目されています。しかし、がんゲノム医療には未だ不明な点も多く、より多くのがんに関連する遺伝子異常を明らかにすることが急務となっています。
左:ゲノム編集で実験的に一塩基だけ変えました。ヒトのDNAは30億塩基対あると言われますが、たった一塩基の違いががんを治療できるかどうかの指標になることがあります。
上:蛍光物質のついた蛋白質を発現する培養細胞をゲノム編集で作りました。この細胞で蛋白質の機能解明を行っています。
私たちは「ゲノム編集」の技術を用いて、がんとの関連性が明らかでない意義不明の遺伝子異常を実験的に再現し、遺伝子異常の意義を解明、がんと関連する遺伝子異常を新たに特定する研究を行っています。ゲノム編集は、目的としている遺伝子の狙ったところを正確に変更できる技術です。遺伝子の編集(挿入、欠失、置換)だけでなく、転写活性の調整、エピジェネティクスなどにも応用可能です。また、ヒトだけでなく、あらゆる生物の遺伝子にも応用可能な技術です。現在、がんゲノム医療研究で用いている本手法を他の遺伝子異常疾患にも応用できるよう、研究の幅を広げて行きたいと考えています。
(期待される効果・応用分野)
がんとの関連性が明らかでない意義不明の遺伝子変異の中でも、治療に有効と考えられる変異を優先的に研究しています。研究成果が新規治療薬の開発につながることが期待できます。ゲノム編集は、がんゲノム医療の研究分野以外にも、遺伝子異常を原因とする様々な疾患にも応用できます。遺伝子異常を原因とする疾患モデル動物の作製などにも応用可能です。遺伝子に関わる様々な研究を行い、筋ジストロフィーなど、遺伝子異常を伴うがん以外の疾患の有効治療にも貢献したいと考えています。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●鹿児島大学病院のがん遺伝子診断外来をはじめとして複数の講座と連携し、解明すべき未知の遺伝子異常について共同研究を実施しています。
● 「がん」領域に限らず、様々な研究に挑戦したいと考えております。
(コーディネーターから一言)
ゲノム編集技術を用いて、がんゲノム医療に有効な未知の遺伝子異常を解明する研究。新規治療薬の開発や、他の遺伝子異常疾患にも応用可能です。他機関の研究者や医薬品会社との共同研究を求めています。
(研究分野)病理学、分子生物学
(キーワード)がんゲノム医療、ゲノム編集
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