炭素系薄膜を用いた光駆動デバイスの開発
- 公開日: 2020-04-20
- 変更日: 2021-09-10
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:1112
(研究の背景及び目的)
共に炭素の同素体であるダイヤモンドと黒鉛の中間には、高硬度で切削工技や剃刀の刃などに使われるダイヤモンドライクカーボン(DLC)をはじめとする、多様な無機炭素系薄膜材料があります。我々はその一つアモルファス窒化炭素に、可視光が照射されると形状を変えるユニークな性質を発見しました。我々の研究室では多彩な炭素系薄膜の作製や物性評価に取り組むとともに、光で動くアモルファス窒化炭素を使った、無電源で遠隔操作が可能なデバイスの開発にも取り組んでいます。
(主な研究内容)
アモルファス窒化炭素薄膜は、理論的に「ダイヤモンドより硬い」とされるβ-C3N4を実現する過程 で生まれた、比較的新しい材料です。炭素を骨格材料としており、同じようにダイヤモンドを目指して作られたDLCの仲間です。本研究ではスパッタ法を用いて作製していますが 、他にも化学気相(CVD)法やレーザーアブレーション法などでも作られ、作製方法によっても異なる性質を示します。我々のグループでは、アモルファス窒化炭素薄膜に光エネルギーを力学的エネルギーに変換できる特性があることを2012年頃に発見しました。物体に吸収された光エネルギーが力学的エネルギーに変換される過程には、光熱変換によって生じた熱による膨張・収縮、化学的に変異する光異性化、光起電力効果による電圧で生じる光磁歪効果などがあります。しかし、アモルファス窒化炭素薄膜が光により形状を変える光誘起変形は、それらのどれにも当てはまらない新しい現象で、現在、メカニズムの解明に取り組んでいます。図1は、ポリマーフィルムにアモルファス窒化炭素をコーティングしたもの(左側)に可視光を照射した際の様子(右側)を示しています。可視光のどの色の光でも動き、色によって動きを変えます。物性解明と並行して、この現象を使って光で動くデバイスの作製も検討しているところです。
(期待される効果・応用分野)
炭素系薄膜は、機械的、電気的、光学的に非常にユニークな特徴を持っています。ハードコーティングだけでなく、細胞親和性や無毒なことから体に直接触れる材料のコーティングや、シリコンや金属に変わる電子部品の構成材料としても着目されています。我々が見つけた光駆動の性質は極めて珍しく、電源無しで変形し動く安価な材料としての用途を検討中です。ブラインドや舞台衣装など、さらには宇宙や人体の中などで光のみで作動する機器にも応用可能と考えて、研究を進めています。
(共同研究などアピールポイント)
アモルファス窒化炭素薄膜の光で動く現象は、国内外の研究者から興味を持たれています。光駆動の特性と、炭素材料の柔軟性・化学的安定性といった特徴を活かしたデバイス開発を検討しています。炭素系薄膜の作製、物性評価を行っています。
(コーディネーターから一言)
注目される材料、炭素系薄膜の専門家。アモルファス窒化炭素の光駆動特性を応用した用途の可能性を検討中です。連携して研究できる企業や研究者を求めています。多彩な炭素系薄膜の作製や物性評価にも応じられます。
動画は、ここをクリックし保存してから再生してください。
研究分野: 応用物理 光学 薄膜工学 固体物性 凝縮電子物性
キーワード: 炭素 アモルファス 薄膜 半導体 スパッタリング
(ご注意)
◯ コメントは公開されます。秘密情報の取り扱いには十分お気をつけください。◯ 非公開で投稿者と連絡を取るには、右の[個別メッセージ]機能を利用して下さい。
個別メッセージ
ニーズ・シーズ投稿者と個別のメッセージ交換を行えます。
関連するニーズ・シーズ
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:993
脳腫瘍診断に特化したカスタム遺伝子パネル検査の開発
シーズ(得意な技術・サービス等) 2020-02-07(研究の背景および目的) 近年、がんの診断・治療現場では、遺伝子変異に合わせて適切な薬物治療や集学的治療を採用する個別化医療が急速に発展しています。遺伝子パネル検査は、その際行われる遺伝子変異を総合的に解析し診断する手法です。特に脳腫瘍では、WHOによる統合病理診断が採用され、診断に遺伝子情報による分子分類が必須となりました。我々は神経膠腫診断に必要な50遺伝子による脳腫瘍に特化した遺伝子パネル検査 (Kagoshima Brain Tumor 50 OncoPanel)を開発、検査体制を構築し...
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:900
高齢者の心身機能の維持・向上と介護予防に関する研究
シーズ(得意な技術・サービス等) 2020-02-07(研究の背景および目的) 高齢化の進展のなか、高齢者が住み慣れた思い入れのある地域で、安心して自立した生活ができる方策が望まれています。加齢に伴う心身機能の衰えにより、認知症や要介護になるリスクが増えます。本研究では、これらの予防や改善のため、超高齢地域である鹿児島県垂水市と協働で、地域高齢者の心身機能に関する科学的データを蓄積しています。科学的根拠に基づき、加齢によるリスクの要因を探ること、心身機能の維持・向上に対して効果的な運動介入方法を開発することを目的としています。 (おもな研究内容) ...
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:7711
量子化学計算プログラム「PAICS」の開発と医薬品開発等への応用
シーズ(得意な技術・サービス等) 2020-02-07(研究の背景および目的) 分子や原子もしくは電子が従う物理方程式を解くことで、様々な化学的現象を理解・予測する研究分野を「計算化学」と呼びます。多くの場合、これらの物理方程式は非常に複雑なので、コンピュ-タを利用して研究を進めることになります。我々の研究室では、生命科学に関する諸問題を計算化学を用いて研究・解決し、社会へ貢献することをめざしています。特に、独自の生体分子量子化学計算プログラム「PAICS」の開発と、医薬品開発などへの応用を主要な研究テーマとしています。 (おもな研究内容) 量子化...