人と動物の比較病態解析により双方の病気を解明する
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2021-08-30
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
全ての生物の設計図であるゲノム遺伝子はATCG(*)という4種のコードの組み合わせでできています。これは人も犬や猫,牛や馬も同じです。生物が病気になるときは,必ずこの遺伝子に何らかの変化が生じます。人の病気の治療は実験動物をモデルにして研究しますが,私たち獣医は実際の病気に罹患した動物を対象に、人と同じように診断治療を行っています。本研究は動物の病気を遺伝子の変化に着目して解明し人の病態と比較することで、動物医療・人医療双方へ貢献することを目指しています
(主な内容)
獣医領域でもCTやMRIなどの画像検査で腫瘍が的確に診断されています。研究では治療のために摘出した動物の腫瘍から遺伝子を採取し、mRNAやnon-codingRNAの網羅的発現解析を行い,コンピュータ上(insilico)で比較解析を行います。右上は、犬の各種腫瘍の画像検査の写真。下左の画像は犬のメラノーマ(悪性皮膚がんの一種)で発現変化するmRNAを示しています。右がメラノーマで発現変化したmicroRNAの関連遺伝子群の解析です。牛の乳房炎は国内だけでも年間数百憶の経済損失があると言われています。遺伝子発現解析では,炎症関連以外の様々なターゲットを発見しています。また,異常な遺伝子が特定の染色体に集積していることを見つけました。
(期待される効果・応用分野)
犬メラノーマの研究では、人のメラノーマの遺伝子発現データとの比較解析により、両者に極めて近似する発現変化が認められる可能性を発見しました。同様に牛の乳房炎で発現変化するmicroRNAが集積する染色体と類似する遺伝子群を持つ人の染色体には、乳房疾患の関連遺伝子が集積するなどの共通性が考えられます。異なる種でも同じ疾患での遺伝子の発現変化は、種の差を超えて共通することを見出しつつあります。動物・人医療双方の新規の診断法や治療法につながると考えています。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●国内(東大,鳥取大、農工大)米国(コーネル大,ジョージア大,ケンタッキー大)ドイツ(ベルリン自由大学)バングラディシュ(バングラディシュ農業大学)など国内外の大学と共同研究を行っています。●人と動物の病態を遺伝子解析で比較できます
(コーディネータから一言)
ヒトと動物の遺伝子の類似点に着目して、病気の解明を目指す研究。遺伝子発現解析により共通する変化を発見しています。人の疾患も含めて共同研究が行えます。医学・獣医学の研究者の問合せをお待ちしています。
(研究分野)
比較病態解析 動物の病気
(キーワード)
遺伝子発現解析 ゲノム 遺伝子 mRNA non-coding RNA microRNA トランスクリプトーム解析
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