インクレチン関連薬は歯の根の炎症を治りやすくするか?
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
2012年の国民健康・栄養調査(厚労省)によると、糖尿病が強く疑われる者(有病者)と糖尿病の可能性を否定できない者(予備群)の合計は2000万人を超え、これは国民6人のうち1人に相当します。糖尿病と歯周病との関連は研究が進んでいますが、歯の根の炎症(根尖性歯周炎)との関連についてはほとんど研究が行われていません。本研究では糖尿病患者の2割以上に用いられているインクレチン関連薬が、根尖性歯周炎に対してどのような影響を与えるかについて明らかにしていきます。
(主な内容)
インクレチンは腸管由来のインスリン分泌刺激因子であり、主として、十二指腸のK細胞が分泌する glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP) と下部小腸や大腸に存在するL細胞が分泌するglucagon-like peptide (GLP)-1 があります。これを用いた糖尿病の新薬が好評で、現在では糖尿病有病者の2割以上に処方されています。インクレチンは膵臓からのインスリン分泌を促進しますが、肝臓のインスリン感受性を増大させたり、血管を弛緩させる等の膵臓以外の臓器・器官に対する作用(膵外作用)があることが、明らかになってきました。本研究では、歯の根の周囲に存在する種々の細胞を用いて、炎症発生におけるインクレチン関連薬の役割を検討します。さらにラットの実験的根尖性歯周炎発生モデルを用いて、インクレチン関連薬が根尖性歯周炎に果たす役割について明らかにしていきます。
(期待される効果・応用分野)
現在、多くの種類のインクレチン関連薬(GLP-1 受容体作動薬とDPP-IV 阻害剤)が臨床に用いられています。血糖値に与える効果や副作用については個々の薬によって異なっていることから、膵臓以外の臓器に対する作用にも差があることが考えられます。糖尿病の患者さんが根尖性歯周炎になると治りにくい傾向があります。インクレチン関連薬が炎症を抑え、失われた歯槽骨の治癒機転に効果のあることが明らかになれば、歯周炎に苦しむ糖尿病患者さんにメリットとなることが期待されます。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●数のインクレチン関連薬を実験で用いる予定です。医薬品メーカーなど、インクレチン関連薬の膵外作用に興味のある企業等との受託研究や共同研究を希望しています。
(コーディネータから一言)
糖尿病の新薬として評価の高いインクレチン関連薬を、歯の根の炎症に応用できないかを研究。根尖性歯周炎が治りにくい糖尿病患者さんへは朗報です。医薬品メーカー等との提携を希望しています。ご連絡ください。
(研究分野)
歯内治療学 保存修復学 口腔細菌学
(キーワード)
根尖性歯周炎 サイトカインネットワーク LPS
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