“場”がもたらすセラピー効果の心理臨床学的研究
- 公開日: 2022-07-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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【研究の背景および目的】
セラピー空間においては、しばしばクライエントとセラピストの間に非日常的な流れが生じ、その結果として、治癒がもたらされます。この非日常的な時空間では一体何が起こっているのでしょうか。これまで心理臨床実践・研究を重ねてきた経験から、そこには身体を持った人と人との出逢いが“場”を生じさせ、そこでの相互作用が治癒をもたらすことが分かってきました。経験として知られている知見を専門職の中だけで流通するものに留めず、関係領域にも広げていければと考えています。
【おもな研究内容】
・科学の周辺領域にある「複雑系」の概念を用いて、心理療法はなぜ効くのかについて研究を進めてきました。最近は、量子論からのアプローチで研究に取り組んでいます。
・領域を横断する心理臨床実践において、具体的な関わり場面に通底する、関与者に生成してくる主体性についての研究も行っています。
・クライエント個人が抱える悩みを、内的な観点から扱うのみならず、その個人を取り巻く文化・風土や社会構造から広く観ていこうとします。そこでは、哲学、社会学、宗教学、量子論等々、横断的な幅広い領域からの知見を用いています。そうした視座を持つことによって、現代に生きる個々人の心理的テーマが、より普遍性の高いものへと昇華されることをサポートすることとなり、ひいては人類全体の叡智となっていくものと考えます。
・主なフィールドは、教育関係(教育委員会、小・中・高等学校、特別支援学級等)で、教育相談を行っている教員や臨床心理士らと共に、学校という教育の“場”における心の支援について、事例検討会やコンサルテーション、共同研究、ワークショップを通じて、実践と研究を重ねてきました。
・また、授業やゼミにおいても、常に個と集団の往還が生じる“場”づくりを心掛けています。それによって、各個人の心の成長と意識の向上が促され、且つ、集団全体においても多様で活発な議論が成され、それが相乗効果としてレベルアップされる結果となってきます。
・昨今、学術の世界においても、領域を横断する研究が益々盛んになってきており、より本質的なテーマに基づく研究がなされてきています。本研究もその一環に連なっています。
【期待される効果・応用分野】
セラピー効果について、より科学的なロジックで人々に解説できることによって、心や癒しに対する認識が、より柔軟に受け入れ易くなると思われます。このことは、臨床心理学が心身の健康増進により広く貢献していくことにつながると考えています。また心理療法が行われる様々な領域-現場(教育、医療、産業等々)での相互作用に共通項を見出し、その知見を活用することが可能になります。個も集団も共に発展・向上しつづける“場”づくりを可能にする理論の構築を目指しています。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●『複雑系からみた心理療法理解-心理療法基礎論に向けて』2007年発行。
●愛知県では教育委員会と連携し、教育相談を行う教員や臨床心理士と協働して学校教育の“場”での支援について実践と研究を行いました。
【コーディネーターから一言】
心理療法の効果を科学的に解説できる理論の構築を目指す研究。セラピーの“場”に注目して幅広い学問分野から考察を重ねています。異なる領域での“場”の相互作用に共通項を見出し、その知見の活用が可能になります。
研究分野:臨床心理学
キーワード:場の理論、主体性、セラピー効果、教育
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