味覚を守る(正常な味蕾を維持する分子機構の解明)
- 公開日: 2022-06-30
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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【研究の背景および目的】
味覚は私たちに食の喜びを与え、食を通じた健康維持に重要な役割を果たしています。食物の味は、口腔や咽頭にある味蕾で受容されます。味蕾は数十~100個ほどの細胞が蕾状に集まった構造です。味蕾細胞は感覚細胞としては寿命が短く、平均するとおよそ10~14日で、次々と新しく置き換わります(ターンオーバー)。ターンオーバーの異常は味覚障害を引き起こします。私たちは、細胞がターンオーバーを繰り返しながら、正常に機能する味蕾が維持される仕組みの解明を進めています。
【おもな研究内容】
味蕾は「幹細胞の増殖→細胞供給→細胞の成熟分化→細胞死」が次々と進行して維持されます(図1)。
味蕾内には、味受容機能の異なる3 種類の成熟細胞(I, II, III型)と成熟前の細胞(前駆細胞)があります。
①私たちは、幹細胞から味蕾に供給された前駆細胞がShh という分子を発現することを発見しました。Shhは細胞の増殖や分化を促す因子で、Shhの異常な発現で生じるガンもあります。近年、Shhの働きを抑える抗ガン剤は、味蕾への細胞供給を減少させ、味覚障害を生じることが明らかにされました。
②私たちは、味蕾のII型細胞とIII型細胞の割合が、味蕾ごとに極めて大きくばらついていることを明らかにしました。
これは、細胞のターンオーバーによって味蕾にI,II,III型細胞が一定の割合で供給されるという従来の説を否定しており、味蕾の細胞供給の仕組みの再検討の必要性を示しています。この研究は、味蕾1個に含まれる全ての細胞を一度に解析する免疫染色の方法によって可能になりました(図2)。
実験材料:マウス(遺伝子改変マウスなど)
研究手法:組織解析(免疫染色、insituhybridization)味覚行動解析、味覚神経応答解析など
【期待される効果・応用分野】
味覚感受性は、抗ガン剤や加齢、感染症など味蕾細胞のターンオーバーに影響する様々な要因で低下します。正常な味覚を維持或いは回復できれば、人々のQOL向上に大きく貢献します。一方、味蕾が正常な機能を保つ仕組みには未だ不明点が多く、味覚障害の予防法や治療法は確立されていません。超高齢社会となった日本では、正常な味覚を保つ意義は健康長寿に直結します。味蕾細胞ターンオーバーのメカニズムの解明は、味覚障害の原因解明と予防法・治療法の開発に役立つ重要な課題です。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●私たちの研究手法は薬剤が味蕾と味覚感受性に与える影響を詳細に評価できます。さまざまな共同研究が可能です。
●味覚は誰にでも身近な研究テーマです。「味を感じるしくみ」についてのセミナー等も可能です。
【コーディネーターから一言】
味蕾細胞が正常に機能するメカニズムを研究。味覚障害の原因解明、予防法・治療法の開発に貢献します。薬剤等が味覚に及ぼす影響を評価したい企業等との共同研究が可能です。味覚についての講演等にもお応えできます。
研究分野:口腔生理学、感覚生理学、食品科学
キーワード:味覚、味蕾
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