全身振動装置による下肢痙縮の軽減とそのメカニズム
- 公開日: 2020-11-28
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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研究の背景および目的
脳卒中や脊髄損傷による障害の一つが痙縮です。痙縮は筋肉が緊張し過ぎて起こる手足のつっぱりや
こわばりで、動作や歩行の妨げになります。リハビリテーションでは薬物療法や注射、温熱療法等を
用いて痙縮の治療を行いますが、十分な効果が得られにくいことも多くリハビリの阻害要因になって
います。痙縮の治療に振動刺激が有効であることが最近分かってきました。我々は筋力増強用の全身
振動装置を安全に用いる方法が下肢痙縮の軽減に有効なことを報告し、その機序を研究しています。
主な研究内容
フィットネスクラブ等でよく使われている全身振動装置は、左の写真のように振動板の上に立って
全身の筋力を増強するものです。脳卒中や脊髄損傷の患者さんは筋力やバランス低下のため、振
動板の上に立つことが困難です。そこで下肢痙縮のリハビリ時に右の写真のように座った状態で、
下肢全体に振動刺激を行うようにしました。
この方法は安全に治療を行うことができ、下肢のつっぱりを軽減して、足の動きを良くすることが
できます。現在、筋電図や磁気刺激、脳波を用いてこの振動刺激が脊髄や脳に与える影響を調べ
ています。強力な振動刺激が、つっぱりや麻痺した足の動きを良くするメカニズムを解明し、将来、
他の治療法と組み合わせて、痙縮や麻痺や感覚障害の治療に用いることを目的としています。
期待される効果・応用分野
足への振動刺激が、筋肉のつっぱりや歩行に良い影響を与えることが、明らかになってきています。
全身振動装置を座位で用いると、強力な振動刺激を安全かつ下肢全体に与えることができます。我々
の治験では痙縮抑制に加え、関節可動域や歩行速度の改善効果もありました。WBVが脊髄や脳に与
える影響を明らかにすることで、より有効な治療法を開発できると考えています。末梢の電気刺激や
運動療法、脳への非侵襲的な刺激法と併用し、より大きな治療成果を引き出す可能性もあります。
■共同研究・特許などアピールポイント
●脳卒中や脊髄損傷のリハビリテーションにおい
て振動刺激や電気刺激を積極的に用いています。
その作用機序を解明し、より良い治療法を開発す
るため、経頭蓋磁気刺激や神経生理的手法を用い
た研究を進めています。
コーディネータからひとこと
先進的リハビリテーション治療を研究、脳卒
中などに実績豊富な講座です。リハビリ専門
医や施術者、脳科学の研究者等と連携した研
究が可能です。リハビリに特化した下肢用振
動装置の開発にも協力できます。
研究分野 リハビリテーション医学、臨床神経生理学
キーワード 全身振動装置、振動刺激、痙縮、脳卒中、脊髄損傷
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