神経活動の可視化を通じて神経・精神疾患を理解する
- 公開日: 2020-11-28
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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研究の背景および目的
脳内の神経細胞は、生命活動における様々な場面に応じて協調的に活動し続けています。各種の神経
・精神的疾患の多くは、神経活動の協調性に乱れが生じることで最終的に表面化します。つまり疾患
や行動異常が表出しているときの脳内の神経活動を広く可視化することで、異常に関わる脳エリアの
特定など原因解明の手掛かりを得ることが可能になります。我々は独自の遺伝子改変・疾患モデルマ
ウスを用い、それらが異常行動を表出する際の神経活動を可視化して疾患原因の理解に迫ります。
■おもな研究内容
神経活動の可視化は、「広く」見る方法と、「狭く詳しく」見る方法
の二つに分けられます。「広く」見る方法の場合は、主に神経活動に伴
って発現が亢進する遺伝子(最初期遺伝子・IEG)を利用します。その際
に通常用いるのは、抗体を利用して最初期遺伝子の発現分布をみる免疫
組織化学的手法です。我々はこの手法を発展させて、最初期遺伝子プロ
モーターの下流に緑色蛍光タンパク質を組み込んだ遺伝子導入マウスを
作出して用いています(図1)。この遺伝子導入マウスを用いることに
より、従来法と比べて迅速かつ、ノイズが低く精度の高い解析が可能と
なるため、マウス脳の広い領域(場合によっては脳全体)に渡って効率
的な神経活動解析が可能になります。
たとえば恐怖体験時は脳内の情動に関連する扁桃体という部位の周辺
で、広く神経活動が亢進します。その際、情動機能に障害があるマウス
は、扁桃体周辺の「どこか」で「何らかの」神経活動の異常が生じてい
ると考えられます。プロット解析を通じて、健康なマウスと比較するこ
とで、どの脳機能に異常があるか、詳細を明らかにできます(図2)。
最初期遺伝子の発現は活動後1~2時間を要するため、時間的制度が
低いのが「広く」見る方法の弱点です。現在その欠点を補うことを可能
にする、新たな遺伝子導入マウスの開発を進めています。
「広く」見て、着目すべき脳エリアが特定された後は、超小型顕微鏡と
生きた神経活動の画像解析を用いた「狭く詳しく」見る方法によって、
詳細な神経活動異常を解析していきます。
■期待される効果・応用分野
「広く」神経活動を可視化する方法は、何らかの異常行動を示す疾患モデルマウス全般で応用可能で
あり、これにより疾患の原因となる(着目すべき)脳部位を絞り込むことが可能です。精神疾患や発
達障害では情動機能に障害がある例が多く、図2に示したような扁桃体での神経活動解析を通じて脳
神経機能障害の詳細が明らかになると期待されます。また、てんかんのような異常神経活動について
も、モデルマウスを用いた解析が進行中です。様々な脳神経系の疾患に応用が可能な技術です。
■共同研究・特許などアピールポイント
●東京大学先端科学技術研究センターと共同で、
てんかんモデルマウスの解析を進めています。
●本学医歯学総合研究科の侵襲制御学分野と、手
術後認知障害のメカニズムの解明を目的とした共
同研究を進めています。
コーディネーターから一言
脳内の神経活動を可視化することで、神経・
精神疾患の根源的原因の解明に迫る研究。効
率的に神経活動を可視化できる独自のモデル
マウスを開発しています。脳神経系疾患の研
究者との連携やマウスの提供・解析が可能です。
研究分野
脳神経科学 ライフサイエンス 脳科学
キーワード
最初期遺伝子、情動、てんかん、術後認知障害、遺伝子改変・疾患モデルマウス
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