島しょ独特の魚類を絶滅から守る保全生態学的研究
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
鹿児島県は多くの島しょを有し、それぞれの魚類が特有の環境にうまく適応して生活しています。私たちの研究室では、魚の生活史を研究しています。水産物として重要な魚種の生態調査は、漁業の資源管理に重要です。一方で、奄美大島、屋久島など島しょ独特の環境下で見事に適応進化した魚類は、彼ら特有の戦略で種を維持しています。なかでも本土のアユとは異なるリュウキュウアユ、屋久島のアユの生活史の解明に向けて研究を進め、環境保全のための活動に活かしていきます。
(主な内容)
アユは北海道以南の日本全域に広く分布し、古くから日本人にとってなじみの深い魚です。日本列島から琉球列島におけるアユの分布域は屋久島以北ですが、屋久島のアユは、九州以北とは異なる独自の進化を遂げた集団で、遺伝的に貴重な個体群であることが分かっています。一方、奄美大島以南にはアユの亜種、リュウキュウアユが分布し絶滅危惧種に指定されています。私たちの研究室では、1990年から奄美大島のリュウキュウアユを対象に調査を続けています。その結果、リュウキュウアユの生活史がほぼ把握でき、一時、総生息数が数千尾にまで減少したこと、ここ数年は数万尾と比較的良好な状態にあることが明らかになっています。地元住民の方々と共に行っている産卵場の造成等のアウトリーチ活動は、新聞やテレビ等のマスコミにも度々取り上げられ、リュウキュウアユ保全への意識が高まってきたところです。私たちはリュウキュウアユでの研究手法を屋久島のアユにも応用して、いつ産卵し、いつ川を上るのかなど屋久島のアユの生活史を解明していきます。奄美大島(川内川)のリュウキュウアユ。アユに比べて小型。
(期待される効果・応用分野)
本研究では屋久島のアユ、奄美大島のリュウキュウアユの生息状況に付いて把握し、保全に必要な生態学的情報を収集します。アユの仲間はもともと冷水環境を好むため、暖かい黒潮の影響を強く受ける屋久島のアユと奄美大島のリュウキュウアユは過酷な環境に晒されています。本研究により、屋久島や奄美大島でのアユの適応様式について解明できれば、地球温暖化に伴う海水温上昇が九州以北のアユの生態や資源動態に及ぼす影響について予測することも可能となります。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●屋久島のアユは鹿児島県「消滅危惧II類」に指定。●沖縄では野生のリュウキュウアユは絶滅、奄美からの移殖個体が自然繁殖しています。●鹿児島湾と薩南海域で魚類の生態調査を実施。産卵・成育場を守るなど資源維持に貢献します。
(コーディネータから一言)
魚類の生態調査により水産資源の維持管理に貢献。鹿児島とくに島しょには独特の魚類が生息しています。その生態を解明することで、保全への意識と活動が広がります。研究と共に講演など広報活動も積極的に行います。
(研究分野)
魚類生態学 保全生態学
(キーワード)
アユ 島嶼 絶滅危惧種 生物多様性 リュウキュウアユ
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