日本近世における出版文化をめぐる諸問題の研究
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
文学を「芸術」と見て、その前衛性や芸術性を分析するという立場をとらず、たとえば「先人の残した作品を後世に伝えようとする営み」や、「娯楽や実用目的に(つまり非芸術的に)作られた産物」を通してその時代を探る試みをも含めて、文学的な営みと捉え、過去の人の行った≪出版≫という営みを総体的に把握することをめざしています。それは我々が、文学によって「どのように価値を作り上げていくのか」「何を後世に伝えていくのか」ということに繋がっています。
(主な内容)
1)江戸時代の戯作および書肆(本屋)の研究江戸時代は戦乱もなく平和な時代が長く続いたため、さまざまな庶民文芸が生み出されました。読本・洒落本・滑稽本・草双紙などから、浮世絵や絵図など一枚刷の印刷物に至るまで膨大な数の出版物が流通していました。これらが産み出される背景や作品の成り立ち、読者の問題などについて研究しています。2)遊里(遊廓)の出版物の研究江戸時代には中央のみならず、地方においても各地で遊里が栄えました。そこでは細見や評判記と呼ばれる出版物が刊行されることが多く、近代に引き継がれていきました。遊里の出版物の実態をさぐり、中央、地方それぞれの特色を浮き彫りにします。3)薩摩藩および鹿児島における出版および書肆の研究江戸時代、藩が刊行した出版物のことを「藩版」と呼びます。「藩版」がどのような人に担われ、どこで作られたのか(意外にこのところが判然としていません)など、成立の過程を解明することを目指しています。また、出版に関わった人物の研究も進めています。一見、地方の問題のように思われますが、中央(あるいは外)の文化をどのように摂取するのかという、中央と地方の関係性として問題を捉える必要があります。本学附属図書館所蔵の玉里文庫『誠忠武鑑』の裏打ち紙が『越前(重富)島津家奥祐筆日記』であることを発見。薩摩の武家の年中行事や冠婚葬祭、日常生活がわかる貴重な資料である。
(期待される効果・応用分野)
●資料の発掘・保存を通じて地方と中央について考える。私が行っている研究は、新資料を見出し、従来とは違った像を描き出すことがまだまだ可能です。資料の発掘には、いろいろな副産物が伴いますが、中でも資料をどのように後世に伝えていくのかということは重要な問題です。現代の人に、また未来の人に、その土地の文化を反映している資料を発信すること、先人たちのそうした取り組みを発掘し、顕彰することをめざします。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●長野県木曽地方や新潟県小千谷地方の出版文化についての共同研究に参加した経験を踏まえて、南九州の文学・歴史資料について掘り起こしを続けています。また、島津家および一門家の文化的営為について総合的に研究を行うため、さまざまな分野の研究者が集う〈大名文化〉を研究する組織を作ることを企図しています。
(コーディネータから一言)
江戸時代の庶民文芸、遊里の出版物など娯楽や実用的な出版物を研究。薩摩藩の出版物を発掘し、研究することで当時の中央と地方との文化的な関係性を捉える事にも取り組んでいます。講演などのご要望にお応えします。
(研究分野)
日本近世文学 日本近世文化
(キーワード)
日本近世文学 戯作 出版 遊里 遊廓 藩版 薩摩藩
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