下痢原性大腸菌の病原因子と薬剤耐性遺伝子
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
現在、病院の細菌検査室や臨床検査センターで行われる下痢原性大腸菌の検査は、O抗原型の検査に限られます。しかしO157など特定の型以外のO抗原型は病原性と直接の関連はなく、常在菌である病原性のない大腸菌も多いため、ほとんどが無意味な報告になっています。また下痢原性大腸菌の種類は多岐にわたり、最近では薬剤耐性菌(*)も増えています。私たちは臨床検査でのこうした問題を解決するために、下痢症患者から分離された大腸菌の病原因子や薬剤耐性について研究を進めています。
(主な内容)
*薬剤耐性菌:薬剤に対して抵抗力を持ち、抗生物質が効きにくくなった菌1.下痢症患児から分離される大腸菌約5000株をPCRという遺伝子検査で検討した結果、約4%が下痢原性大腸菌のさまざまな病原遺伝子を保有していること、特に腸管凝集性大腸菌(EAEC)と腸管病原性大腸菌(EPEC)の頻度が高いことが明らかになりました。2.病原因子が明らかな下痢原性大腸菌のO抗原型はさまざまで、O抗原型が不明のものも多くみられました。一方、O抗原型が陽性でもほとんどの大腸菌は病原因子を保有していませんでした。3.検出された全大腸菌の約2%はESBL(基質拡張型βラクタマーゼ)を産生する薬剤耐性菌であり、特に腸管凝集性大腸菌(EAEC)では28%に上ることがわかりました。マルチプレックスPCRとリアルタイムPCRによる病原・耐性遺伝子の網羅的検出
(期待される効果・応用分野)
安価で簡便な大腸菌の病原因子と耐性遺伝子の検査法の確立本研究により、大腸菌の病原因子とO抗原型はほぼ無関係であること、病原因子そのものを調べることで病原性のある大腸菌なのか、病原性のない常在菌なのか判断できることが明らかになりました。大腸菌の病原因子を迅速に検査できれば、現在混乱している検査報告の問題点を解決でき、診断・治療に有益な情報となります。また最近増加しているESBL(基質拡張型βラクタマーゼ)産生菌についても、薬剤耐性遺伝子を検査することで薬剤感受性試験(*)を行う前に迅速な報告が可能となります。*薬剤感受性試験:ある細菌(微生物)に対して、ある薬剤が効く(感受性)か、効かない(耐性)かを判断する検査
(共同研究・特許などアピールポイント)
●細菌検査関連の会社や臨床検査センターなど医療関連の会社との共同研究が可能です。●大腸菌の分子疫学研究や病原メカニズムの研究の他に、MRSA、インフルエンザ菌、バルトネラなど臨床で重要な細菌について研究を行っています。
(コーディネータから一言)
O抗原型の大腸菌検査が病原性と関連が薄い点に着目。病原遺伝子そのものを調べ、臨床に役立つ検査方法を提案します。実用化に向けて、より安価で簡便な手法を共同研究できる検査会社等のパートナーを求めています。
(研究分野)
臨床細菌学 感染症学 感染制御学
(キーワード)
細菌検査 下痢原性大腸菌 病原性大腸菌 感染制御 臨床検査 病原因子 薬剤耐性
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