農場動物の伝染性疾病の診断・治療と防疫対策
- 公開日: 2024-09-26
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
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【研究の背景および目的】
農場には、牛、馬、豚、山羊、羊、鶏など多くの動物が飼われています。幼若動物は、ヒトの子供と同様に免疫力が弱く、様々な感染症による死亡や発育不良は大きな経済損失をもたらします。私は長年、国内の農場における各種伝染性疾病(ウイルス、細菌、寄生虫、原虫など)を調査し、疾病診断、治療、予防対策を改善してきました。飼育環境の衛生管理を適切に実行し、畜産技術の向上を支援することで食肉の安全で安定した供給を保持し、国民の需要を満たし健康維持に貢献することが目的です。
【おもな研究内容】
農場動物の伝染性疾病に関する調査・研究
国内海外を問わず、哺乳期から離乳期の子牛、子豚あるいは子馬はしばしば、下痢、肺炎を発症し、死亡あるいは発育不良の疾病に罹ります。その原因には、大腸菌、ロタウイルス、コクシジウム、クリプトスポリジウム、クロストリジウム、ブラキスピラ(大型らせん菌)やローソニア(小型のカンマ状菌)あるいはサルモネラなどのウイルス、細菌、寄生虫などが関与しています。鶏においても、大腸菌、クロストリジウム、サルモネラなどの感染で健康な発育が阻害されています。このように多岐に渡る感染症防除のために、正確で迅速に診断し、どのような治療あるいは予防が効果的か等の試験・研究を実施して、結果を畜産現場にフィードバックしています。
例えば、「豚の大腸菌症」について、右の図で説明しましょう。
大腸菌による疾病はその大腸菌の病原性の特徴、強さ、感染量により
種々の病型がみられます。
図aは、大腸菌が主に小腸に感染・定着して、下痢症状がみられる症型
(新生期下痢症、離乳後下痢症)です。
図bは、小腸に定着した大腸菌が志賀毒素を産生し中枢神経系、消化管、
皮下など全身に毒素が回り、浮腫病(Stx2eトキセミア)型を示します。
図cは、大腸菌自身が宿主の全身をまわり、侵襲、局所感染し、髄膜炎、
関節炎などを起こす腸管外大腸菌症の敗血症型を示します。
図dでは、大腸菌が乳房や膀胱に感染し、乳房炎、尿路感染症型など腸
管外大腸菌症を起こします。
迅速に病型を診断し、適切な治療・予防を実施することが大切です。
早期診断・治療と予防には健康診断と衛生管理が何より重要です。南九州畜産獣医学教育研究センター(SKLVセンター)は農場動物の臨床実習と衛生管理が学べる施設として、全国から獣医学生、畜産関係者を受け入れています。
【期待される効果・応用分野】
動物の定期的な健康診断を継続することで、各疾病の早期発見、早期治療が可能になります。また診断結果を活かした予防対策をとることで、動物の健康を保持できます。これはアニマルウェルフェアの観点でもとても重要です。鳥インフルエンザの蔓延で顕著なように、伝染病は食の安定供給を脅かします。SKLVセンターは安全な「食」の提供する畜産業発展のために、現場から頼られる施設を目指しています。国家の安全保障の礎である「食」の安定供給を堅持するための研究を行っています。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●当センターでは牛・豚・鶏・馬の参加型臨床実習が可能。産業動物獣医師の育成に尽力します。
●センターが位置する曽於市周辺は畜産業の集積地、農場動物大都会です。立地条件を活かし、畜産農家と協働で疾病予防に関する調査・研究を推進します。
【コーディネーターから一言】
家畜伝染病の研究に邁進し、飼育の衛生管理を指導する防疫の第一人者。SKLVセンターでは全国の獣医学性、畜産関係者に実践的教育を行います。無料セミナーも随時開催中。一般向けエリアも併設、是非ご来場ください。
研究分野:獣医衛生学、獣医微生物学、獣医病理学、獣医疫学、獣医防疫学
キーワード:抗菌剤、プロバイオティクス、口蹄疫、豚熱、鳥インフルエンザ、ローソニア、大腸菌
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