針生検を用いたゲノム診断による卵巣・卵管がん治療の構築
- 公開日: 2024-09-20
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
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【研究の背景および目的】
卵巣・卵管がんが疑われる場合、化学療法・維持療法の決定には治療開始前の腫瘍組織による病理診断・ゲノム検査が重要です。この部位の組織採取には通常手術が必要なため、化学療法を先行します。その後の手術時(IDS)に採取した組織の病理診断においては、検体量の不足や化学療法によるゲノム修飾で正確な結果が得られないことが問題となっています。私たちは超音波ガイド下針生検による腫瘍採取を治療開始前に行い、早期のゲノム解析で的確な治療に結び付ける臨床研究を開始しています。
【おもな研究内容】
•複数の癌腫を対象として初回治療時にCGP(包括的ゲノムプロファイリング)検査を行うことの臨床的有用性の検証を目的とした(Upfront NCC Oncopanelproject)が先進医療として実施中です。しかし、卵巣・卵管がんにおいては組織検体採取が困難であるため、対象外となっています。
•組織採取の方法としては針生検以外に全身状態良好な患者さんには全身麻酔下での腹腔鏡下生検が試みられていますが、手術侵襲・手術枠の確保・化学療法遅延など様々な問題を有しています。
•本研究は超音波ガイド下針生検を経腟的・経腹的に専用の採取キットを用いて安全に組織を採取し、統合的分類を治療開始前に行い治療の個別化・治療効果予測に役立てるための検討を行っています。
【期待される効果・応用分野】
針生検は乳腺・前立腺腫瘍などに用いられていますが、卵巣腫瘍に関しては当院を含む一部の施設でのみ病理診断を目的に試みられています。当科では安全・非侵襲な針生検を治療開始時に行い、治療薬の適応を判定するコンパニオン検査や婦人科悪性腫瘍に特化した独自のカスタム遺伝子パネル検査等に用います。当科で臨床稼働しているカスタムパネル検査は安価で容易に家族性腫瘍を含むゲノム解析が可能です。組織及びゲノム解析に基づく治療法を確立し、個別化治療への進展も期待できます。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●病理部と合同で婦人科カスタムパネルを用いた様々な臨床応用を子宮体がんを中心に行い報告しております。本研究対象となる予後の悪い卵巣がんでは臨床例を増やし研究を進めていきます。
●鹿児島大学病院はがんゲノム拠点病院に指定されています。
【コーディネーターから一言】
難治性の進行卵巣・卵管がんの治療を迅速に最適化する治療法の確立に挑戦。針生検と独自の婦人科カスタムパネルにより、ゲノム解析に基づく治療を早期に開始できます。個別化治療への展開も視野に研究を進めています。
研究分野:婦人科がん、ゲノム診断、組織診断、ゲノムパネル検査
キーワード:卵巣がん、組織採取、針生検、ゲノムパネル検査、個別化治療
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