生命に必要な窒素固定を効率的に行うバクテリアの研究
- 公開日: 2024-08-22
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:85
【研究の背景および目的】
地球上の大気の約80%の窒素ガスです。窒素ガス(N2)をアンモニア(NH3)に変換する反応は「窒素固定」と呼ばれます。アンモニアは植物の窒素養分や発電燃料となる重要な化合物です。地球上での窒素固定の半分以上はバクテリア(細菌)によって行われ、土壌や海洋などには窒素固定を行う能力をもつ多種多様なバクテリアが存在します。私たちはその中でも「フランキア」という細菌種を研究対象として、効率よく窒素固定を行うために必要な遺伝子の同定に取り組んでいます。
【おもな研究内容】
窒素固定を行う酵素は酸素に非常に弱いため、多くの窒素固定バクテリアは酸素濃度の低い環境でしか窒素固定を行えません。しかしバクテリアが呼吸によって窒素固定反応に必要なエネルギーを生産するためには酸素が必要なので、このようなバクテリアは窒素固定の効率があまり高くありません。
フランキア(Frankia)は、窒素固定酵素を酸素から守る特殊な構造(ベシクル)を作ります。ベシクルは周辺を厚い外壁に覆われているため、それが内部への酸素流入を防ぎ、酸素が多い環境でも呼吸でエネルギーを得ながら活発に窒素固定を行うことができます。
私たちの研究室では、窒素固定を行えないフランキアの変異体を多数単離しました。それらの中には、ベシクルをほとんど作れないものや、外壁が厚くならないものが含まれています。つまりこれらの変異体では、ベシクルの正常な発達に必要な遺伝子が変異を起こしていると考えられます。現在変異体のゲノム解析などを行うことにより、これらの遺伝子の同定を試みています。
フランキアが酸素存在下でも効率的に窒素固定を行うことを可能にする、ベシクル形成に必要な遺伝子の解明を目指しています。
【期待される効果・応用分野】
窒素固定で生成されたアンモニアは植物に吸収されて、タンパク質など生命に重要な物質を作るために使われ、食物連鎖を経て動物の成長にも使われます。優れた窒素固定能力をフランキアが獲得したメカニズムを遺伝子レベルで解析しています。フランキアは荒廃地の森林再生にも役立っています。私たちはフランキアを園芸や農作物への天然由来の肥料として活用できると考えています。フランキアの細胞を使ってアンモニアを合成するバイオリアクターの開発にも興味を持っています。
【共同研究・特許などアピールポイント】
●成長が遅いフランキアを培養する技術を持っています。土壌や海洋などの環境中から、窒素固定細菌を単離や同定することも可能です。
●数十種のフランキア株を保有しています。目的に応じて適切な種を選別することも可能です。
【コーディネーターから一言】
窒素固定細菌、フランキアの独自性に着目。高い窒素固定能力に必要な遺伝子の解明に取組んでいます。数十種のフランキア株を有し、環境中からの単離・同定も可能。有機肥料やバイオリアクターへの展開が期待できます。
研究分野:分子生物学、微生物学
キーワード:窒素固定、アンモニア、遺伝子、放線菌、フランキア、ベシクル
(ご注意)
◯ コメントは公開されます。秘密情報の取り扱いには十分お気をつけください。◯ 非公開で投稿者と連絡を取るには、右の[個別メッセージ]機能を利用して下さい。
個別メッセージ
ニーズ・シーズ投稿者と個別のメッセージ交換を行えます。
関連するニーズ・シーズ
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:111
木材の構造と樹木の成長の季節変化に関する研究
シーズ(得意な技術・サービス等) 2024-07-31【研究の背景および目的】 樹木を生き生きと育てるには、まず、樹木がどのようにその場所に適応し、生育しているのかを知ることが大切です。森林を形成する様々な樹木の葉の開き方と、顕微鏡レベルでの細胞構造の変化との関係を、季節を追って調べることで、樹木がどのように成長しているのかを明らかにする研究を行っています。森や樹木を健全な状態に保つにはどうしたら良いのか、生育環境に合った樹木の育て方、さらに樹木の適切な利用方法について、日々考えながら研究を進めています。 【おもな研究内容】 【研究の方法】 森林・...
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:100
酸化ストレス制御による口腔粘膜炎の予防・進行抑制
シーズ(得意な技術・サービス等) 2024-07-22【研究の背景および目的】 癌の治療のための手段の一つとして,化学放射線療法を行うことが増えてきています。しかしその副作用として口内粘膜炎(口内炎)が発症し,患者の摂食・嚥下を困難にすることが問題となっています。近年,化学放射線療法時に発生する口腔粘膜炎に酸化ストレスと炎症が関与していることが分かってきました。本研究では,抗酸化物質の投与によって酸化ストレスと炎症を制御することで,副作用として発症する口腔粘膜炎の予防,進行抑制および治癒の促進を目指すことを目的としています。 【おもな研究内容】 正...
-
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター
- お気に入り件数:0
- 閲覧数:69
薬剤耐性菌や新型コロナウイルス感染症の感染対策
シーズ(得意な技術・サービス等) 2024-07-22【研究の背景および目的】 薬剤耐性菌や新型コロナウイルス感染症等新興感染症が社会的問題となっています。特に医療機関や介護福祉施設での感染症発生は感染者の健康や施設の運営に大きなダメージとなるため、感染拡大を防ぐうえで医療機関や施設内での感染対策の確立は重要な課題です。感染対策確立のためには、集団発生事例における疫学評価を行い拡大要因を評価する必要があり、我々は専門的に解析を行い、感染対策の確立のための研究を進めています。 【おもな研究内容】 •MRSAの感染対策について、主に整形外科領域の手術部...