異方性銀ナノ粒子の形状制御と医療用検査機器への応用
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2023-01-27
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
結晶の方位で異なる性質を持つ異方性の金属ナノ粒子は、形状に由来する特異な物性を示すため、機能性ナノ材料として電気・電子、医療などのハイテク分野での活用が期待されています。我々は棒状金属ナノ粒子を精密な形状に制御することに成功しました。この粒子には様々な生理活性物質(*)を表面修飾できるため、抗体を吸着させ疾病原因物質の検出に用いることができます。感染症や癌などの診断に応用できる、新たな機能性プローブ(*)粒子の開発とその実用技術の実現をめざしています。
(主な内容)
生理活性物質:様々な生理活動を制御する化学物質の総称。ホルモンや抗体等のタンパク分子、神経伝達物質など。プローブ:ある物質の存在を確認・検出するために用いる物質。対象と相互作用する物質を用いる。●棒状の金ナノロッドはパルスレーザー光照射によって、効率よく金イオン/金クラスターイオンを放出する材料であることを見出した。マウスに静脈投与した金ナノロッドが肝臓に分布している様子をイメージング質量分析で明らかにできた。金は化学的に極めて安定であり、さらに多様な表面修飾を実現できるので、金ナノ粒子をプローブとして用いる超高感度イメージング分析を実現できる。生体組織の免疫染色技術となるように、粒子形状や表面修飾の最適化を行っている。M.Fujii,etal.,Chem.Lett.2014,Vol.43,pp.131-133.●金ナノロッドに銀のシェルを付与した銀シェル金ナノロッドは極めて均一な形状を有する異方性銀ナノ粒子であり、その分光特性は形状変化(銀の溶解)や凝集に極めて敏感である。我々は、この分光特性変化を免疫反応や酵素反応と組み合わせることで、蛍光法やさらには化学発光法に匹敵する感度を有し、置き換えが可能な分析技術を実現することをめざしている。Y.Hamasaki,etal.,J.Phys.Chem.C,2013,Vol.117,pp.2521-2530.Y.Hamasaki,etal.,Chem.Lett.2014,2013,Vol.42,pp.1093-1095.
(期待される効果・応用分野)
現在のインフルエンザ検査キットは、発症前の早期診断が困難です。我々が開発した銀シェル金ナノロッドが持つ極めて均一で変化に敏感な特性を、免疫反応・酵素反応と組み合わせると簡便で高感度、短時間で診断可能な検査キットを開発できる可能性があります。また我々が形状制御した金ナノロッドをプローブとして用いれば、コンパクトで安価な質量分析装置が実現でき、癌などの早期診断に応用できます。機能性ナノ粒子を医療用検査技術に活用、疾病の早期発見に役立てたいと考えています。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●オリジナリティの高いナノ粒子プローブで排他性の高い汎用分析法を実現します。●特願2011-196528特開2013-057605「銀シェル金ナノロッドを用いる分析方法」●特願2013-126186「ナノ粒子脱離イオンプローブ質量分析」
(コーディネータから一言)
異方性金属ナノ粒子の極めて精密な形状制御に成功。感染症など疾病の原因物質の検出に応用できます。簡便、迅速に診断できる医療用検査キット、診断機器への展開が可能です。実用化に向けた提携企業を求めています。
(研究分野)
コロイド界面化学 分析化学 ナノバイオサイエンス
(キーワード)
検出・診断技術 プローブ粒子 質量分析 免疫検出 バイオプローブ
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