ストレスによる影響を軽減するメカニズムの探索
- 公開日: 2019-05-13
- 変更日: 2020-09-25
- 投稿者:鹿児島大学南九州・南西諸島域イノベーションセンター 研究・産学地域連携ユニット
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(研究の背景および目的)
精神的・身体的なストレスが精神疾患症状の原因になることは明らかになっていますが、どのように症状と関わっているのか、という機序については不明なことが多く残されています。脳内の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)は通常、鎮静的に作用しますが、ストレスを経験したマウスでは興奮を引き起こします。本研究はこの応答性の変化がストレスによるものと考え、マウスの行動解析に基づいて、ストレスの影響を軽減する薬物療法のメカニズムに迫ることを目指しています。
(主な内容)
精神的・身体的なストレスを経験したマウスは精神疾患様の症状を呈することが、これまでの研究から明らかになっています。たとえば幼若期に育児放棄を経験したマウスでは成長後に不安を感じにくくなり、また攻撃傾向が高くなることが分かっています(Furukawa et al.,2017; Tsukahara etal., 2015)。 私は健常な個体では抑制的な神経活動を引き起こす脳内の神経伝達物質「GABA」が、ストレスを経験した個体では過剰な神経活動を引き起こすことに着目しました。この応答性の変化が疾患様症状を引き起こすメカニズムであると考え、これを標的とした薬物による治療効果の検証を進めています。 私は過去にメダカの細胞を使って放射線の生物影響について調べて来ました(Igarashiet al., 2017)。放射線による生体の機能障害には、例えば脳腫瘍の放射線治療に伴って認知機能に障害が惹起されることが知られています。私はこの放射線による病態にも、上記のストレスによる病態と類似のメカニズムが関与する可能性を考え、培養細胞を用いて検証しています。また観察容器に移したマウスがどのように動き回るのか、また前日見たおもちゃを記憶しているかなど、行動解析の手法により調べています。
(期待される効果・応用分野)
ストレスが精神疾患に及ぼすメカニズムを解明し、ストレス軽減に利する物質を探索していきます。●パニック障害や不安障害などの症状を軽減させる物質が見つかれば、サプリメントや医薬品の開発に役立つと期待されます。精神疾患症状に伴う対人関係の問題を軽減する新たな方策となり得ます。●これまで詳細不明とされる病態にも、類似のメカニズムが関与している可能性があります。個々人の症状に適応した新たな治療法の検証につながると考えています。
(共同研究・特許などアピールポイント)
●複雑なマウスの行動をより詳細に理解するために、解析装置メーカーと連携して研究を推進しています。
(コーディネータから一言)
ストレスが精神疾患に及ぼす影響のメカニズムを研究。ストレス軽減に有効な物質の探索を進めています。自然由来で穏やかに作用するサプリや医薬品の開発が目標。健康食品や医薬品企業との共同研究を求めています。
(研究分野)
薬理学
(キーワード)
薬理学 ストレス 精神疾患
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